ルカはクマの後を追って25分ほど経つが、時間が経つにつれ、クマが遠くに遠ざかっていくのがわかった。ルカの神経を逆撫でするような不安感は、荒野の奥へ進むごとに大きくなっていった。自分の弱さを痛感した。熊が突然、敵意をむき出しにしたら、もう勝ち目はない。森に飲み込まれ、家族は彼の謎の失踪を心配することになるだろう…。
ルカは突然の恐怖に襲われた。もし、自分が盲目的に熊の仕掛けた危険な罠にはまったとしたら?不安でたまらなくなり、額に汗がにじんできた。何か見覚えのあるものはないか、目印になるものはないかと、必死に周囲を見渡した。しかし、そこにあるのは見慣れない木々や森の静寂だけだった。
ルカの脳裏には、故郷や家族への憧れが去来していた…。